ndl – dialy 14,Aug,2007

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この日記はアーティスト・イン・レジデンス”ndl”でプーケット滞在中に書かれたものです。
ndl
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しばらく日記を書けなかったのは他にやることがあったからなのだけれど、日記を書くのもやらなければならないことの一つで、実を言うと日記はプーケットでのほほんとリラックスしすぎるだろう自分に対して与えたストレスというか、プレッシャーというか、枷というか、その類のもので、すでにプレッシャー満載の状態ではいつもの日記の量や文体や構成を維持することはできない。これはボクの大きな誤算の一つで、つまりチャンスなのだが、どのようにチャンスを活かすかをさっきから部屋で考えている。パソコンから流れている音楽はボクがときどき作るノンミックスCDで、それはDJが曲と繋いで行くときにどんなことを考えるのかと気になっていた頃に友だちが提案してくれた方法で、クロスフェードで曲を繋げないミックスCDのようなものだ。でも、今は4枚のミックスCDに入っている曲と最近好きになった曲がランダムに再生されているからノンミックスではない。
部屋に入ると左手には壁で右側に空間が開けていて、そのほとんどをダブルサイズのベッドが占めている。ベッドの向かい側には机が壁についていて、壁の中央に鏡がある。机は壁の真ん中くらいから始まり、ドアと逆側に伸びて洗面所兼トイレ兼シャワールームに続くドアの手前で終わる。玄関ドアを開けてすぐ、机の置かれていないスペースには大きな地図が書かれてあって、そこに恐らく緯度経度だと思うが縦横に糸が張られてあって、糸を止めるためなのか地図の四辺は黒いテープで囲まれている。さらに地図の中心を東西南北の一点とした四つの円が重なるように赤い線で書かれていて、でもその円は正円ではなく横に少しながくて、線もいびつだ。これは前の前のアーティストが作って行ったものだ。ドアを入って右手には冷蔵庫があって、そこにはいくつかメモが貼られている。その横はクローゼットが二つならび、観音開きなので把手は四つあって、それぞれ引き出しのついている腰くらいの高さの小型タンスがひとつづつ置かれている。ドア側の小型タンスの引き出しの一番上にはいろんなものが入っていたが、それをゆっくり見ることはいままでしてなくて、今日の夕方、はじめて全ての中身をひっくりかえして見てみら、何枚か写真が見つかった。ポラロイドが二枚と、プリンタで印刷したA4の紙に6枚の写真が収まっているもの、あとキャビネ版くらいの大きさのものが一枚で、これは全部一番始めのアーティストが撮ったものだろう。彼自身も映っていて、ボクが知っている人も映っている。このことは、ボクの知っている人はボクを知る前に彼を知っていたということを、とても意味した。

冷蔵庫のメモにはこうある。
To next artist or the artist who comes here.
I want you to get a stall or some space on the street. You and the other can show some pieces or serve drinks or just put something on that space.
MAY. 01. 2550

その下に貼られたものは、上に貼られた筆ペンのような字とは違い、プリンターで印刷されたものだが日付と名前だけはボールペンで書かれている。
I want you to make a big map of Phuket on this wall. You and the other can write something or stick something or you can use this map freely.
08/02/2550

今日はノックの音で起きた。また朝まで作業していて、でも一度携帯の目覚ましの音で八時に起きたのだけど、結局11時まで寝ていて、すぐにシャワーを浴びて大学に向かった。3人の男の子と1人の女の子が集まってくれて、セッティングに時間がかかってしまい撮影自体は15分もできなかったが、トークイベントで行うWSの説明をするには充分で、でもボクはタイ文字は読めないしタイ語はわからないから正直どのシーンを使えばいいかはわからない。その後、大学内の食堂でご飯を食べたが、魚が食べたいと思って選んだら辛過ぎて食べれず、もう一品選んだおかずも葉っぱの入った味のない厚揚げを細かく切った感じで、ご飯も粒が潰れているし、恐らくプーケットに来て初めてのハズレだろう。信藤の知り合いのデザイナーが食事に誘ってくれたが、今日は断って一人で食べた。大学の目の前の食堂で、Kao pad of chicken と言ったら通じた。あとはリンゴのスムージー。テレビではサメが人を食べていた。自分ではっきりと感じるくらい、ナーバスになっている。全てボクの責任ではない。が、この状態を招いたのはボクがちゃんと選択しなかったからだろう。テーブルにあったメモ帳はオーダーを書いて渡すためのものだが、それを一枚切り取り、ボクが食べたもの、以前も来たことがあること、ホントはスイカのスムージーにしたかったがi don’t haveと言われたからリンゴにしたがおいしいということなどを、青いペンで書いて、メモ帳の一番後ろに挟んで帰ったら玄関の前に信藤とオクノがいた。

転んだときの傷は完全にかさぶたになった。左ひじから前腕にかけて少し、左ひざの外側に少し、左のすねにボソボソと、右ひざに少し、どれも擦り傷で、あと左足の付け根に青あざができている。かさぶたをはがすのがとても好きだ。はがして血がでたところは、きれいな飲料水で流して傷薬をつけた。聞くところによると、三つ前のアーティストがやっぱりモトで転んだときに使ったものらしい。消毒液や綿もあったが、それはボクはつかっていない。

打ち合わせで高校の日本語の先生とまた会う。教えているといってもベラベラ話せるわけではなく、ボクは通訳がつくと聞いていたので日本語でかなりしっかり原稿を書いていたが、その原稿では難しすぎると判断してかなり易しい文章に直した。一つの文章で接続詞は二回使わない、専門用語は使わない、できるだけ直線的な文章、そのように直した原稿を渡し、初めて日本語を学ぶ外国人が話すような日本語を使って先生に説明する。分別用のゴミ箱が並んだ写真に書かれていたタイ文字は「寂しい」という意味だった。
やっぱりストレスになっているのだろう。音楽を聞きながら、ベッドで日記を書くことが、初め思っていたのと全然違う、むしろ現実逃避のための作業に思えてくる。あとは何をする予定だったのか、またはあとは何をすべきなのか、もともとわからないものを忘れる時間。
チャンスを活かすだとか考える前に、戻ってルール通りに書けば良いのだろう。心配しなければならないのはむしろ、メモしかとっていない書きかけの日記がボクを説明しすぎるかもしれないということだが、「毎日日記を書く」「ウソはつかない」、この二点を守るためにはそれが最良の手段だ。
明日はオクノがバンコクに発つ。部屋の前に貼ってある簡易なポストにフライヤーを入れていたが、それが今日3枚なくなった。一枚は信藤が隣の部屋の女の子に渡した。その子はノックをして部屋に入ってきて、ベランダから隣の部屋に渡った。ドアには Knock! Feel free to say “Hello!” と書いた紙が貼ってある。ノックをしたのは今のところ、その女の子一人だ。

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