ndl – dialy 18,Aug,2007

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この日記はアーティスト・イン・レジデンス”ndl”でプーケット滞在中に書かれたものです。
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プーケットの空港を出発してすぐ、ビデオカメラを構えたが露がついていると警告がでた。しばらく放置しないと使えるようにならないから、窓の外に目をやると、大きな看板の横に、大きな看板を支えている骨組みが見える。要は看板を後ろから見ていたということなのだが、この骨組みはボクのいくつか前に滞在していたアーティストの作品で目にしたことがあって、それはまったく同じものではないだろうけれど、途端にいま自分はプーケットにいるのだとはっきりと感じ、動かないビデオカメラをもどかしく思った。部屋の鍵はバンコクに行く前に預けていたから、それをどう受け取ろうかと電話をして、ボクは I’m home と言う。それは冗談で言った。車の窓から見る夜景は、バンコクもプーケットも大きくは変わらない。初めて来たとき、沖縄のことを思いだしたのは、やっぱり視覚ではない他の要素のせいだったのだろうが、視覚も他のものも全部混ぜてボクが感じたことだ。

バンコクの夜、夜中何度か目を冷ました。寒かったのかクーラーの音が気になったのか、覚えていないしすぐにまた寝てしまったが、プーケットではいつも目覚ましの音も聞こえないくらい寝ていて寝坊していた。日中の出かけ先はバンコク市街の少し北にあるマーケットで、ボクは名前は知らないが、オクノとみかちゃんが行くというのでビデオカメラに一脚をつけ、道中少しづつ撮影しながらついて行ったが、気温はプーケットと比べ物にならないくらい高くて、しかも途中で入った食堂で出てきたのはタイで今まで食べたものの中で二番目に辛く、ペプシを追加で注文したが口の痛みはなかなか収まらず、そのまま左右に店が並ぶ迷路を汗だくでさまよっていた。買ったのはTシャツ3枚、手のひらサイズのミラーボールの飾り2つ。
サイアムまで戻って、マンゴーを食べに入った店は、今度代官山にもできるというマンゴータンゴで、生のマンゴー+マンゴーアイス+マンゴー果実入りマンゴープリンが一つのプレートに載ったマンゴータンゴを食べる。マンゴーは最高においしい食べ物だ。100バーツでこれだけ食べれるのがタイだけなら、今後タイに移り住むことも真剣に考えたかもしれないが、姉が沖縄に住んでいた頃マンゴーは食べ飽きたと言っていたことがあって、それは同じマンゴーでも種が違うかもしれないが、いつだか沖縄から東京に送られてきたマンゴーも最高においしく、しかも姉はその特大の2玉を1000円足らずで買ったといっていた。1000円と100バーツならだいぶ違うが、送られてきたマンゴーの一つ一つはマンゴータンゴで出てきた生マンゴーの3倍くらいあったと思う。ボクは台所でむしゃぶりついた。送られてきてから数日たったときで、その時家には食べ物は何もなく、かなりおなかが減っていたように記憶しているが、マンゴーひとつでおなか一杯になり、もう一つは誰かと食べようととっておいたが結局また台所でむしゃぶりついた。家と言っても今の東京の家ではない。

みかちゃんとはマンゴータンゴを食べ終えた後に別れ、彼女はホテルに戻り夜にまた何かのイベントを見に行くというので、それまで時間のあるオクノとまた一緒にマッサージに行く。タイ古式マッサージは300バーツで全身いろいろやってくれるが、いまはもうすでにその効果もなく肩はこっているし足はくたくたで、でもマッサージはどちらかというと足が中心だったから、腰から肩にかけてが弱いボクに適したコースではなかったのかもしれない。いまリュックからは荷物はもう出してしまったが、何を背負っていたかを列挙してみると、
ビデオカメラ Panasonic MX-5000
ワイコン(セミフィッシュ、×0.45のもの) Reynox 型番は忘れた
バッテリー2つ
フィルターケース
マイク Rode NT-4
マイクホルダー
Tシャツ3枚
ミラーボールの飾り2つ
Macbook
カメラ Nikon D-80 レンズはタムロンの18-200mmF値は忘れた
GITZOの6段一脚
思うに、ボクはいつも一眼レフとビデオカメラを持って歩いているが同時に使うのはほぼ不可能だから持って行かなければいいんだと思う。持って行くからリュックはパンパンになり、肩も腰も疲れる。マッサージを受けながら思ったが、同時にもう一つ感じたことがあって、それは家や旅行といったキーワードと同じくボクがこれから作ることになる作品で重要になる「何が主体か」ということで、日記を書くボクと撮影しているボクは同じボクなのか、もしかしたら違う人なんじゃないか、今は同じでも今後違う人になる可能性はあるんじゃないか、と背中に熱いけれどスースーする液体を塗られながら思っていた。
一番の懸念は、映像と日記が絵日記の絵と文の関係になってしまうことで、でも使い方は何も決めていないのだからそうなることはたぶんない。

バンコクは車がとにかく多く、車の横を通ると暑いから、たぶんバンコクの気温の高さは車の多さと直結していて、でもデパートやモールの中はとにかく寒く、みかちゃんと待ち合わせていたデパートの自動ドアが開くたび、屋内の冷気が外に出されてそれを直に浴び続けると屋外なのに寒くなったり、空港でもずっとカーディガンを着ていないといけないくらい寒い。タクシーは派手な色が多いが、とにかく目を引くのは濃いピンクのタクシーで、ボクが空港まで行くのに乗ったタクシーも確かピンク色だった。窓から運転席を覗き空港まで行きたいと言うと、どの空港かと聞かれ、バンコクに2つ空港があるのは知っていたがいまから自分が行くべき空港がなんという空港かはわからず、航空券を見てみるが今度は発音できない。運転手が「Suvarnabhumi か」と聞いてくるが、その発音が難しく真似もできない。YesYesと返し、車は出発して空港までの約40分をビデオで撮ろうとファインダーを覗く。雨に反射するヘッドライトがどのようにカメラに映るのかは知っているし、ボクはそれが好きだが、そのとき撮っていたのは過ぎて行く対向車の明かりではなく、バックミラーにチラチラうつる運転手の顔と、ラジオを聞いて笑う彼の声だ。出会う人全てが撮る対象になり、書く対象になってしまう。ボクはボクのことを定義するのは好きではない。曖昧なままでいいものを明確にするのも好きではない。ただ今日は自分は迷惑な人だとは特に思う日だ。初めてバンコクの空港に来たときにタバコを吸ったのと同じ喫煙席で、またタバコを吸った。今度は誰にも会わなかったから、映っているのは自分のリュックだけだが、違う喫煙席ではイタリア語を話している一団がいて、飛行機に向かうバスに乗るとき彼らは大きな体を窮屈そうに縮めながら四方に散って、そして大声で話す。それは以前会ったイタリア人グループのことを思いださせた。二週間たつ。彼らはもうたぶんプーケットにいないだろう。

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