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この日記はアーティスト・イン・レジデンス”ndl”でプーケット滞在中に書かれたものです。
ndl
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眠気眼のまま屋台で焼き鳥とパンケーキを買い、モトに乗って向かうはPSUロッジ、焼き鳥を食べながら扉を開けると正面にいた女の子は「スドサンデスカ」と言いつつ小さな冊子と紙を差し出しきた。近くの椅子に座って紙にサインしていると、今度その子は小さな白い紙箱とパックのジュースを持ってきて「オナカスイテマスカ?」と、あまり癖のない自然な日本語で訪ねる。ツアーに参加する二人の日本人と合流して聞いたところ、その子は韓国人の留学生だということがわかり、ツアーは主にこの女の子ともう一人タイ人の男の子が案内係となって進められたのだが、バスの中での説明も現地での説明も英語なので内容はわかるもののタイ語の単語が覚えられず、どこに行って何を見たのか書く事ができないので、もらった冊子を見てみようと探したのだがどこにもない。代わりにチラシを見てみた。が、一番の見所だと紹介された木の名前がどこにも載っていない。Kao Pra Taew がどこなのかもわからない。いろいろわからないまま2時間ほどのツアーは終わったのだが、ジャングルの中を探索するのは一人ではとてもできないことで、学生が考えたツアーで説明に足りないところがあっただろうとは言え、体験としてはかなり濃いものになったが、渓流の上を岩を選んで幾度も渡ったときの音も臭いもなんだか北海道に住んでいたころよくキャンプしていた森に似ていて、生えていた植物は日本では見たことのないものだけれど、今思い起こしているジャングルの様子は熱帯のジャングルのイメージとはほど遠いものになっている。ただ、水の流れる音や葉が擦れる音の中、唐突にいくつかの高いパルス波が鳴り、微妙にずれたり合ったりしながら弱まっていくと同時にトレモロが速くなっていくのが非常に音楽的だった。それは昆虫の声だと説明され、どのような昆虫かはわからないがボクは蝉のようなものだと想像していて、ツアーの体験を忘れられないものにしているのは風景よりもこの昆虫の声だ。昼頃に解散して家に着いた途端に眠気がやってきてそのまま昼寝し、次に起きたのは18時頃で、PSU前の食堂で夕食を食べ、屋台でクレープを買って家でコーヒーを飲みながら食べているとSから電話がかかってきた。
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興奮と言っても、それは例えばゲイバーのゲイの人たちやパブの女の子たちとお酒を飲んだからだけではなくって、単純にパトンビーチについたときの歓楽街の熱気と、帰るときにはすでに静まり返っていた街の、その温度差や、自転車の視界を何倍もの速度でみるモトに乗ったこととか、なんだかんだで一日ずっと緊張していたんじゃないかと思う。パブの女の子もゲイバーの男の子も、ホントにベタベタ体を触ってくるし、ゲイバー街では一目でゲイですとわかる人たちが店の前で誘ってきて、ボクはそのときスカートをはいて髪を二つ結びにしていたのだけれど、それが悪かったのか、スカートはめくられるしゲイの腕力は普通に男の腕力だからぐいぐい引っ張られてしまうし、そういうのは焦るけれど楽しんでもいたのだろう。普段意識的に抑圧しているものの実態、近づきたくはないけれど手に入れたい、過去のもの。いくらNo thank you と言っても離してくれない、My friends wait for me – OK, i follow you – really? okok, come with me – でもグイグイ引っ張る。入ったのはショーをやってるバーだった。
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初めてのパトンに行ったのは8月7日、今日で四度目、夜のパトンは三度目になるが今日は歓楽街の熱気よりもむしろ、熱気の中静まっている空間にばかり目がいってしまい、いくら酒が入っても、車椅子の物売りや地べたに座って両手で移動する下半身不随の物売りなど、彼らのことを思ってしまって、でも何を思っても偽善という単語が最後には出てくる。バーに荷物を置いたまま、カメラを持って一人で歩いていると、すれ違う外国人観光客は誰もが楽しそうで、彼らにとっては幾度とない特別な時間なのだろうが、物売りたちはその時間をお金にしようと毎日何時間も街を歩く。非日常と日常が毎日、齟齬なく触れ続ける構造が街全体に出来ている。
下半身付随の男性は物売りではなく、何か紙のようなものを観光客に渡そうと上へと手を伸ばしていた。ボクとSが入ったバーの中、黒いタンクトップにジーンズのタイ人の女性は曲に合わせて激しく腰を振り、外国人客を挑発するように踊り続ける。大音量の店内、通りに面した細長いテーブルの店側に座るボクの向かい、通り側の席には笑いながら話す4人の男性と3人の女性、一見して観光客だと分かる彼らはタバコ・アクセサリー・花束などいろいろな物売りに声をかけられては断り、彼らの隙間から通りを見ると赤い服を来た女性が二人、チケットのようなものを配り、下半身不随の男性は彼女たちからそのチケットの束をもらってまた配り始めた。赤い服に書かれた文字は、ゲイバーが並ぶ向かいの横町の突き当たりにあるディスコの名前だ。
外でタバコを吸っていたボクの前、激しく踊っていた黒タンクトップの女性が幾人かの外国人客と一緒に店を出、彼らとハグをし合い、客の一人と共に歩き出した。その男性客は少し歩いてから再び友人に何かを言いに戻り、その間彼女はかまわず先に進んで、男性が話し終え彼女に追いつくまで一度も振り向かなかった。彼らがどこに向かうか、タバコを吸い終えてからも見続けていたが、ビーチに続く通りを出る直前で見失い、ボクは店内へと戻って聞き慣れないヒップホップのキックのタイミングを覚えようとつつ、知らぬ間にテーブルにあったビールを飲み、カメラを構えた。ボクとSが入ったこのバーは女主人の誕生日という事で、その場にいる客全員になんども酒が振る舞われ、ジンかウォッカかわからなかったがストレートのまま塩とライムを入れて2杯、ビールを4杯、足がふらつくほどではなかったがピントが合わせられなくなっている。写真をプリントして明日持ってくると女主人に言うと、彼女はダメだと言う。
「明日は特別な日、一年で明日だけお店を休んで家でテレビを見て電話がでてもとらない、私の日」
お酒のビンの飾りに Art for living, 2007, Sudo と書く。「普段意識的に抑圧しているものの実態、近づきたくはないけれど手に入れたい、過去のもの」とは何の事なのか全くわからない。家のことと関係あるのだろうか。
今日はうまく書けない。



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