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この日記はアーティスト・イン・レジデンス”ndl”でプーケット滞在中に書かれたものです。
ndl
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31日、バンコクの空港でこれを書いている。30日の夜は寝ていないから、これは30日の日記のつもりで書くけれど、ボクにとっては一続きのことで、この日記に書いた出来事以後のことがこの日記に少なからず影響を与えているのは疑うところない。
雨の音がまだする中、やっと静まった向かいの部屋の音楽に安堵しつつも、向かいの住人が音楽を消してさっさと寝てしまったのだとしたら、未だ寝れていないボクは一体なんなんだと考えているうち、漏れ聞こえていた重低音を消すためにかけていた音楽も終わってボクはやっと眠くなり、パソコンのディスプレイの青白い明かりはいつも気分を落ち着かなくさせるが、その時に限っては朝日のようで悪くなかった。
起きて時間を確認しようと携帯を見るとメールが一通、Sから「明日の飛行機の時間を教えて、タクシー予約するから」、これを見てボクは初めて、今日が一日プーケットにいる最後の日なのだということに気がつき、そのとき時刻は16時を過ぎていた。
まだやっていないことはなんなのかと考えるが、実際そんなになく、観光地には全然行っていないし昼間のパトンビーチにもう一度行きたかったしもっと沢山の人に会いたいとも思ったが、それはやり残したことというわけでもなく、ボクはいろんな人にさようならを言うために今日を使うことに決めて、まず向かったのはPSU前の食堂だった。
グリーンカレーを頼むかパッタイを頼むか、かなり迷った末、明日の朝もう一度来ると心に決めてパッタイを頼み、だからこの日は撮った人物写真の中に食堂のおばちゃんたちはいなく、あるのはブックストアの店員さんの写真とパトンのバーの女の子とクェートから来たバダハさんの写真の二種類だ。
ブックストアではいつだか一緒に食事した面々はいなく男性の店員が一人だけで、ボクがいた一時間程度の間に来た客も馴染みなのかその店員と楽しそうに話していた外国人の一人だけで、ボクはタイの現代美術関係の書籍があればそれを買うつもりだったが、タイ語の背表紙が並ぶ本棚からは発見できず、マンガ一冊とキャンバス地に刺繍の模様が入ったカバーのついている大きめの手帳を買い、冷めたカプチーノを飲み干してから店員に声をかけ、写真を撮らせてもらった。痩せていてあまり背は高くなく濃い茶色の肌をした彼は、あまり英語は話せないようだったが、次にプーケットに来るのはいつかと尋ねてきた。
バタハさんは、どう綴るのかわからないが、バはvaではなくfaだというのでfadahaとでも書くのだろうか、非常に大きな人で縦横高さ会わせるとボクの三人分くらいの体積はあり、黒のランニングシャツに半ズボンとサンダル、荷物は何も持たずにそのバーで一人ビールを飲んでいたところに、なぜか店員の女の子はボクを案内した。
バダハさんは近くのホテルに泊まっているらしいが、客の少ない店内でやることがなかったのか店員の女の子も一緒にいろいろ話していると、どういう話の成り行きだったか覚えていないが、その女の子は店の奥にあるトイレを指差し、you can stay there tonight とバダハさんに言う。そう言ったかどうかはわからないが、そんな内容のことを言われバタハさんも OK, my home my home, とたどたどしい英語で返し、ボクはと言えば Can I use your house? と断りを入れてからトイレに立ち、なんのことはない冗談を小一時間ほど言い合っていた。店員の女の子は25歳だと言うがとてもそうは見えず、もっと若く、というか幼く見えてバーで働いているのだから20歳は下回ってないだろうと思ってはいたもののとてもボクより年上だとは思えず、でも彼女はとてもキレイに日焼けした頬に手をあて、もう肌が若くないといった素振りをする。次にプーケットに来るのはいつかと、彼女は尋ねてきた。ボクが帰ろうと席を立つと彼はボクのレシートをとって自分が払うからと言い、ボクは一度は断ったけれど結局お金は出さずに店を出た。
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ゲイバーではちゃんと振り付けがあって衣装もちゃんとしてて、どこまで変えているかはわからないけれど見た目は女性な人が口パクで歌うショーが幾つかあったあと、白のピチピチパンツだけのお兄ちゃんたちがリズムをとってるだけのステージがずっと続いた。クラブのフロアで好きに体を動かす人たちが、そのままステージの上に上がって、観客はそれを見ることになるのだけれど、次第に踊り終えたゲイたちがボクらの周りにあつまってきて、横に座りキスをしてくる。
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バーに行く前、ゴツいカメラを両手で支えて8月7日に行ったこのゲイバーのある通りを歩いていると、前にカメラを構えたときにはポーズまでしてくれたのであまり嫌がられることはないだろうと予想していたが、今度はキスをされるどころか、もう、いくつもの手が同時にダイレクトに股間を狙ってくる。並んだ5人のゲイを前に一人ずつにカメラを向け自己紹介を始めさせ、しばらくは良かったけれど、それが終わると再び股間攻撃が再開され、撮影するのが仕事なんだと言い訳のようなことを言いつつボクは急いでそこ去ったが、今度はショーで着るような金ピカの下着を着けたゲイの一団がいて、カメラを向けずに去ることなどできるはずもなく立ち向かうと、またも熾烈な攻撃に合う。激しさを増してくると、触るというより打撃に近い。そしてブラジャーを取り始める人も出始め、これは全部わずか5分くらいの間のことだけれど、結局ここでもあまり話しもせずに立ち去ってしまって、いつものバーがある大きな通りへ移動した。ここでも、大きなカメラを持っていると話しかけられたりカメラの前でポーズをし始める酔っぱらった外国人に数回つかまり、一度などはボクを女性と思ったのかそれとも男性だからなのか、2000バーツを握らされて、何の事かわかっていなかったボクの手首をつかんで歩き始めた目が虚ろの男性に、恐らく地元のタイ人だと思うが、一人の女性がつっかかってものすごい剣幕で「ビッチ!」と罵り始め、結果ボクは彼女に助けられた感じになったのだが、それでも懲りずに場所を変えてテープが終わるまで撮影をボクは続けた。
帰り道、長い坂を昇りきったところで街頭がなくなり、ふいに暗くなる。眼下にちらほら見えるプーケットの街の灯りを演出するための仕掛けなのかどうかはわからないが、それは見とれるほど美しい光景では決してない。ただ、車の通りが少なければ、一度くらいはモトを止め、ゆっくり見てもよかったかなと思った。いくつもの後悔、ゆっくりやってきてはシカトされる。



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